理事長のご挨拶
このたび日本産科婦人科内視鏡学会の理事長を拝命いたしました。本学会は1973年に設立され、もう少しで半世紀を迎えます。米国婦人科内視鏡学会に匹敵する世界においても有数の長い歴史を誇っています。最近は会員数も増加し、現在4,100名を超える学会に成長しております。理事長として多くの先達の築いた伝統を引き継ぎ、発展させる重責を感じております。
日本産科婦人科内視鏡学会の設立目的は「産科婦人科領域における内視鏡に関する研究の進歩と発展を図り、もって人類・社会の福祉に貢献する」ことです。内視鏡は診断・治療のための手段のなかで最も重要なもののひとつです。医学、工学など多くのサイエンスが内視鏡の発展を支えています。本学会は産科婦人科領域の内視鏡に関して、基礎から臨床までの研究を幅広く促進し、教育、社会活動を通して診療を向上させ医学・医療に貢献しています。なかでも内視鏡手術の発展・普及は手術に革命的な変化をもたらしてきました。傷が小さいことは患者さんに最も分かり易い利点ですが、術野の拡大視が器機の進化と相まってより繊細・確実な手術へと進化させていることが最大の利点と考えています。
地域格差なく安全に内視鏡手術を普及させることは本学会の大きな役割です。このために、技術認定制度と認定研修施設制度に力を注いできました。結果として技術認定医は900名を超え、認定研修施設は300施設を超えました。定期的にガイドラインを改訂し、診療の標準化にも努力してきました。地域格差なく教育を普及し技術を向上させるために、全国規模での研修会などに加えて質の高い地域の研究会等をさらに重視していく必要があると考えています。また、子宮悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術とロボット支援下手術への対応も急務です。いずれも複数の関連学会にまたがる問題を抱えておりますが、緊密な連携のもと本学会で整備されている基盤を有効に活用して医療の向上に寄与していきたいと考えています。国民の皆様に内視鏡手術の恩恵を享受していただくために、ホームページなどの広報による啓発活動、新たな術式の保険収載を目指した活動も引き続き取り組んでいきます。
明日の医学を築くために学術研究活動は貴重です。優れた研究や技術を表彰し、次世代を担う会員の学術研究活動を刺激していきます。また、学術集会、学会誌をさらに活性化し、AAGL, ESGE, APAGE, ISGE などの国際学会との交流を発展させたいと考えています。本学会の症例登録システムは内視鏡手術の安全性調査の重要なデータですが、今後は我が国から世界にエビデンスを発信するための資料としても研究活動に役立てることができると思います。
本学会がさらに躍進するためには、学会の組織運営の強化も重要です。変化する時代に適応した学会運営を戦略的・効果的におこなうために、今期より新たに特任理事を設けました。私自身は浅学菲才の身ではありますが、理事、特任理事、監事、評議員、幹事、会員一同と力を合わせて学会の発展に精一杯尽くす所存です。どうぞ多々ご意見をいただき、ご指導、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。